ニュースリリース

環境DNA分析によってアユの産卵実態の詳細が明らかに

未知の重要産卵場を発見。新しい資源保全・管理へ

福岡工業大学社会環境学科の乾准教授と山口大学の赤松教授らの研究チームは島根県の高津川におけるアユの生息・産卵の実態を2年間にわたって「環境DNA分析」という手法で調べました。その結果、これまで知られていなかった高津川のアユの重要な産卵場候補地を発見するとともに、産卵期の始まり・終わりや、年による産卵場利用の違いなどを明らかにしました。高津川流域にとって重要な経済・観光資源であるアユですが近年の漁獲量は大幅に減少しています。「環境DNA分析」を用いることで、従来の採集や目視調査では難しかった、大河川におけるアユの動態や産卵状況を簡易・迅速に把握できる可能性が広がり、様々な河川において、その年のアユの生息状況に合わせた産卵場の保全や禁漁期間の設定など、新しい資源保全・管理の形を目指すことも可能になります。研究結果について是非ご取材をお願い申し上げます。
※本研究の成果をまとめた論文はオンラインジャーナル「frontiers in Ecology and Evolution」に掲載されています。
福岡工業大学社会環境学科 乾隆帝(いぬい・りゅうてい)准教授 山口大学大学院創成科学研究科 赤松良久(あかまつ・よしひさ)教授,齋藤稔特命助教,宮園誠二特命助教,中尾遼平特命准教授,

アユの重要な産卵場を「浅瀬」以外にも発見

2018年から2019年の2年間、9月から12月にかけて、高津川の河口から約10㎞の範囲を日没前と日没後に定期的に調査。環境DNA分析によるモニタリングを行い、アユの産卵時間帯である日没後の環境DNA量(濃度・フラックス)を、日没前と比較しました。その結果、重要な産卵場として知られていた3つの浅瀬で夜間の環境DNA量が増加していただけでなく、水深のある平瀬やトロ場でも夜間の環境DNA量が増加している場所があることが明らかになりました。アユの産卵場は、一般的には水深の浅い瀬であると考えられていましたが、この研究の結果は、今まで産卵場として重要視されていなかった、水深のある平瀬やトロ場などが重要な産卵場となっていることを示唆しています。また、2年間の調査の過程で、アユの産卵開始時期や産卵時期のピーク、産卵時終了時期を明確に割り出すことも出来ました。

DNAから生物追跡「環境DNA」分析とは

川の水に含まれる魚などの生物のフンや、皮膚、分泌物の微細な破片に注目し含まれるDNAを読みときます。水に含まれる破片からその場所にどんな種の生物がいるのか特定することが可能です。また、含まれるDNAの量からどれくらいの密度で生物がいるのかも分析できます。およそ1リットルの水を汲むだけでサンプル採取が可能で、生物を実際に採集する従来の方法よりも少ない時間や労力で生息状況を把握できます。アユの産卵期には産卵に伴って水中に放出された精子等の生殖細胞や産卵行動に伴う親魚由来の体細胞由来のDNAが環境DNA濃度の一時的な増加につながると考えられています。

本研究の意義

日本の河川において、アユは漁業だけでなく遊漁による経済的価値が非常に高く地域の資源として重要な魚種の一つです。しかし、近年日本全国の河川で漁獲量が減少しています。古くからアユ漁がさかんな高津川においても総漁獲量は、昭和の時代には150トンから200トンの水準で推移していましたが、近年は約4分の1程度に減少しています。資源を持続的に利活用するためにはその河川のその年のアユの生息状況を迅速に把握して産卵場の保全や禁漁期間の設定などを行うことが必要になります。

アユはこれまで、遊泳力が高い、流速の速い瀬に生息している、調査場所が漁場と重なり漁業者や釣り人の反感を招くなどの理由から、採集や潜水目視調査による実態把握には多大な労力が必要でした。特に産卵場における潜水目視調査は、調査によって産卵場が荒らされることが問題視されていました。この研究では環境DNA分析を用いることでアユの生息・産卵の実態を簡易・迅速に把握できる可能性が明らかになりました。つまり環境DNA分析を様々な河川に適用することで、それぞれの河川において、いつ・どこに主要な産卵個体群がいるのか、現在の産卵場がどこなのかを、リアルタイムに近い形で把握することができるため、その河川の、その年の状況に応じた適切な資源保全・管理が可能になると考えています。環境DNAから生物の生態を追跡する研究に是非ご着目下さい。
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ニュースリリース   2021/06/01