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トピックス 2022.06.28

[生命環境化学科]宮元展義准教授 機械的強度の向上、物性の最適化が可能な複合ゲルの合成方法について特許を取得

【特許番号】第7019148号  【登録日】2022年2月4日
【発明の名称】複合ゲルの合成方法、及び複合ゲル
【発明者】宮元 展義、石井 宏樹

従来技術の課題・問題点

高分子ゲルは、線状の高分子が架橋されて3次元的な網目状構造となり、多量の溶媒を吸収した膨潤体です。高分子ゲルの架橋点の分布には偏りが存在していることから構造が不均一であり、高分子鎖に負荷がかかりやすい箇所とかかりにくい箇所とが不均一に存在します。そのため、通常、高分子ゲルの機械的強度は弱いです。そこで、粘土鉱物、カーボンブラック等の無機フィラーと高分子ゲルとを複合化したコンポジットゲルや、環状分子を含むポリロタキサンを可動な架橋点として高分子ゲルに用いたトポロジカルゲル等による高分子ゲルの物性向上の研究がなされています。しかし、これまでの方法で合成されるMPS※は粒径、粒径分布、形状が制御されておらず、粒径が大きく、合成過程で強く凝集し、高分子ゲル中で分散しにくい性質を有します。そのため、MPSは、高分子ゲル中では不均一に分布する傾向があります。したがって、MPSと高分子とが複合されて得られる高分子ゲルの機械的特性等の各種物性の最適化、つまり、各種物性の制御が困難です。
※ MPS:メソポーラスシリカ (mesoporous silica) とは、二酸化ケイ素(シリカ)を材質として、均一で規則的な細孔(メソ孔)を持つ物質のことである。

本発明の効果・特長

本発明に係る複合ゲルの合成方法、及び複合ゲルによれば、高分子と当該高分子中に分散しやすく粒径が小さい無機フィラーとが複合化された高分子ゲル(複合ゲル)を合成し、複合ゲルの機械的強度の向上、及び物性の最適化ができる複合ゲルの合成方法、及び複合ゲルを提供できます。

本発明の概要

本発明の実施の形態に係る複合ゲルは、コロイド状メソポーラスシリカ(CMPS)と高分子ゲルとの複合体です。この複合ゲルは以下のようにして合成することができます。まず、所定のアミン化合物、界面活性剤、及びケイ素化合物を所定の溶媒内で混合し、粒径が小さく単分散性のCMPSを合成します。そして、合成したCMPSの濃度を所定の濃度に調製します。続いて、所定の濃度に調製したCMPS、所定の重合性モノマー、架橋剤、及び開始剤を所定の溶媒内で混合し、重合性モノマーの重合反応を進行させます。これにより、高分子ゲルが合成されます。そして、溶媒内にCMPSと高分子ゲルとが共存しているので、高分子ゲルの合成と共にCMPSと高分子ゲルとが複合化されます。これにより、本実施形態に係る複合ゲルが合成されます。

  本実施形態において粒径が小さい単分散のCMPSは、溶媒中で高い分散性を発揮し、凝集せずに存在します。ここに高分子を構成するモノマーを添加すると、モノマーの一部がCMPSのメソ孔内に吸い込まれ、溶液中のモノマー量が減少します。この状態で重合反応を進行させると、高い分散性を保ったままのCMPSがポリマーのゲル内に含まれることになります。

ここで、ポリマーとCMPSとは所定の相互作用をすると推測されます。この相互作用の詳細は現段階では明らかではありませんが、CMPSがポリマーのトポロジカルな架橋点として存在すること、ポリマー同士をCMPSが物理的に架橋すること、及び/又はCMPSの孔をポリマー鎖が貫通すること等の相互作用が起こっていると推測されます。
これにより、複合ゲル中にCMPSが実質的に均一に分散した状態が維持され、また、CMPSの細孔(メソ孔)内にモノマーの一部が吸い込まれることにより、ポリマー量が添加したモノマーから計算されるポリマー量より減少しているので、柔らかい状態を保ちつつ機械的強度が大幅に向上した複合ゲルを合成できると推測されます。

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